【第一号報告書】これが青年海外協力隊の報告書!!
ボランティアとして海外で活動する青年海外協力隊。
ボランティアなので、基本的に義務的なものはほとんどありませんが、
派遣期間中、5回の報告書提出が求められます。
JICAボランティアが作成した報告書は後任への引継ぎに使用されたり、JICA地球ひろばで全国民に向けて公開されています。
第一号報告書の各項目と作成目的
第一号報告書の記載内容はこの7つ。
・報告書要約
・項目1. 活動地域及び配属先の概要
・項目2.ボランティアが所属する部局の概要
・項目3.配属先のニーズ
・項目4.活動計画準備状況
・項目5.受入国の印象
・JICAへの要望・提案
青年海外協力隊の報告書作成の目的は以下の3つ。
JICAボランティア・ガイドブック
1. ボランティア自身が自己の活動の管理及び評価を行う
2. 事業関係者が情報を共有する
3. 情報を広く国民へ開示する
第一号報告書の作成の背景は以下の通りです。
JICAボランティア・ガイドブック
「赴任後の3ケ月、2年間の活動の基盤づくりを行う準備期間であり、第一号報告書では配属先の現状把握と先方と一体となって検討した活動の報告性を明確にする」
報告書要約
赴任地ココポはイーストニューブリテン州の州都であり、パプアニューギニア国内においても発展している地域である。赴任先のココポセカンダリースクールはココポの中心地から車で10分程度の場所に位置し、G9からG12までの35クラス、生徒数約1600人の公立高校である。州内でも優秀な学校であり、ナショナルイグザムでココポ地区1位の成績を残している進学校にあたる。進学校らしく授業運営も安定しており、学年始め、学年末まで教員、生徒も学校へ来て授業を受けているところから、今後の活動も比較的スムーズにいくことが想定できる。 JICAボランティアは過去2代、コンピュータ技術系の職種で赴任し、私で3代目にあたる。学内には歴代の隊員が構築した教員用、生徒用のサーバが設置され、生徒用のパソコン80台がネットワークで接続されている。校長が率先して学内のICT化、ペーパーレスによる学校運営を目指しており、私の代では、学内へのインターネット引き込みとコンピュータルームの移設、増設、学内の無線環境構築が期待されている。カウンターパートのICTに関する知識は、大学時代に専攻したICT概論程度のよう。授業運営には問題なさそうだが、学内ICT環境の構築、運用を単独で行えるほどではないため、2年間の間に帰国後に単独で運用できる程度まで知識移管を行いたいと考えている。 インターネット環境は大洋州らしく劣悪であり、ISP業者へ見積もり手配したところ、2Mbps程度の速度で月27万円程度の維持費が必要と返答がきた。3か月で学内ICT部門の予算をオーバーする額であるため、安価で高品質な回線を手配できるすべはないか、業者と対応しているところである。スマートフォンでのデータ通信も同様に高額で、日本にいたころの倍程度の額である。ICT教育においてインターネットは重要な項目のひとつのため、どのように対応するか今後検討が必要である。
項目1. 活動地域及び配属先の概要
(1)活動地域概要、抱える問題
活動地域のココポは、パプアニューギニア北東部のイーストニューブリテン州の州都である。ココポは、パプアニューギニア国内においても栄えた地域であり、時たま停電するものの電気、上下水道の供給は安定している。市内には商店も多く、食料品から日用雑貨まで生活に困らない範囲で充実している。
(2)配属先の事業内容、組織体系(人員配置状況)
公立高等学校(Kokopo Secondary School)にて、高校生に対して授業を実施する。生徒数約1600名。 人員配置状況は、Principal: 1名、Administration Deputy Principal:1名、Upper Secondary Deputy Principal:1名、Lower Secondary Deputy Principal:1名、その他教員60名を含めた計64名。 その他専属の事務員やCarpenterなど10名程度が所属している。
(3)配属先の援助受け入れ実績
協力隊の受け入れは、初代SV、2代目JVに続いて3代目。 その他、華人が運営する現地商店より現PCルームの寄贈を受けている。
項目2.ボランティアが所属する部局の概要
(1)ボランティアが所属する部局の事業内容及び課題
科目ごとにデパートメントが分かれており、要請内容のComputing、ICTはTVET(Technical Vocational Education Department)に所属する。主な事業内容は、授業実施と学内ICT環境の運用である。昨年までComputing、ICTは教員2名で授業を行っていたが、片方の教員が宿題の提出等をまったく求めなかったため、生徒の成績に大きなムラがあった。今期からはボランティアとカウンターパートの2人で業務を行うよう話を進めている。またICT管理者がカウンターパート1名のみであり、負担がかかっているように思える。
(2)同僚の人数及び技術レベル
教員数:64人
TVET:10人(うち、Computing、ICTは2人)
他校と比較して、学年末まで安定して授業を運営できており、生徒達も優秀である。現在、学内ICT環境の大幅な変更とインターネット回線構築のプロジェクトをボランティア中心に行っている。カウンターパートはネットワークやサーバに関する知識が不足しているため、今後知識移管が必要であると考えている。
項目3.配属先のニーズ
(1)ボランティアに対して期待している内容
ボランティアに求めるニーズは大きく以下の2点。
1. 授業運営
2.学内ICT環境の改善
-インターネット接続
-コンピュータの増設
-パソコンルームの移設、増設
-ネットワーク構築
-カウンターパートへの知識移管
Computing、ICTの授業運営と学内ICT環境の改善、ICT専任教員への知識継承が主なニーズである。ICT環境の改善は校長主導のもと進めており、ペーパレスによる学校運営が最終目標のよう。前任者がパソコンルーム、アドミニストレーションルームのネットワークを構築、サーバを設置したことにより、授業はスムーズに進んでいる。今後、パソコンルームの移設とパソコン追加設置による新規パソコンルーム設置を検討しているため、それに伴うネットワークを含めた環境構築が主なニーズとなっている。
(2)当初要請時のニーズからの変更点
他教員と話している中で「Economics担当の教員が不足している」ということが判明したため、今年度はGrade11のEconomicsも合わせて受け持つこととなった。その他のニーズの変更点は今のところない。
項目4.活動計画準備状況
昨年は赴任直後ということもあり授業を持たなかったため、今年度、来年度の活動を見据えて、以下の活動を行った。
■学内ICT環境の改善
・PCの修理(8台)
・新規サーバ設置(メールサーバおよびICT教材を導入。活用方法は今後カウンターパートと検討する予定)
・NGO団体(Class4Everyone)へのPC手配要請
・将来的な学内ICT環境についてヒヤリング
■その他、授業準備等
・授業見学、テスト監督、テスト採点
・月報作成(これまでなかった試みで校長は喜んでいた)
・シラバス、授業教材の読みこみ
いずれの活動も学内環境を把握することができ、現状の理解に役立った。今年に入り、インターネット環境構築プロジェクトが動きだしたため、目下はISP業者とのやり取り、授業運営に注力している。また、年始より教師所有のパソコンの修理依頼を多く受けており、時間がかかっている。マウスなどの備品が不足しているため、パソコン修理を有償にし、備品購入の費用に回せるよう校長と検討している。今後2年間の活動は、授業運営と学内ICT環境促進、知識移管が主軸となるため、具体的に各項目を深堀りしていこうと考えている。
項目5.受入国の印象
パプアニューギニアは途上国でも特に危険地域であり、出国前はあまり良い印象を受けていなかったが、ココポでは大半の現地人が友好的で、親日家が多い印象を受けている。町を歩けば、アリガトー!(挨拶だと思いこんでいるようだが)と大きな声で挨拶してくれ、笑顔も多い。他者に対してフレンドリーな土地柄であり、困ったときはすぐに助けてくれるため、生活に困ることもなく、ありがたい存在である。なお、盗難等の軽犯罪は日常的に発生しており、赴任後に複数名のボランティア関係者が被害を受けているため、注意していく必要がある。また、月1回ほどのペースでM8レベルの地震が発生しているため、こちらも注意が必要。 公用語は英語、トクピジン語である。学内はすべて英語、日常会話にはトクピジン語を使用している。都市部では英語が通じるが村では英語を話せない人が多い。計算能力も低く、九九の暗記等を行っていないからか、ひとつひとつ数える人も多いため、学力差が大きいように感じている。また、マーケットでの価格競争が発生していない点が印象的であり、肥沃な国土で絶対飢餓が発生しない一方、収益増加の意識に乏しいものと思われる。
JICAへの要望・提案
パプアニューギニアへ派遣される際、2015年のパプアニューギニア国日本国間の取り決めにより、公用目的で入国する日本人についてはビザの取得が不要となっているが、周知されていないように思われる。2016年度2次隊として出国する際、カンタス航空ならびに旅行代理店はビザ不要との認識がなく、当初はビザ未取得、片道チケットのみのためにスムーズに航空チケットを発券してもらえなかった。ひとまず、オーストラリアまでのチケット発券となり出国したが、パプアニューギニアに入国する際も隊員の判断により、入国管理局でビザを取得して入国しました。駒ヶ根訓練所にて公用旅券、旅行代理店による手続きなどの説明を受けた際にビザ不要についての説明はなかった認識ですが、今後の協力隊員のスムーズな出国、入国手配のためにも、駒ヶ根訓練所等で周知する必要があると思います。