World Development Report2016 - Digital Dividends の概要
世界銀行が2016年にWorld Development Reportで発表したDigital Dividendsに対する考察。
そのReportに対して、2017年にオンラインレッスンのedX上で
"Digital Dividends - Strengthening the Analog Foundation of the Digital Revolution"と題して、
Digital Dividendsの講座があったのでその概要と忘備録。
- Digital Dividendsってなに?
- Digital Dividends - Strengthening the Analog Foundation of the Digital Revolutionの概要
- Digital Dividends - 情報格差とデジタル化がもたらす発展の現状
- デジタルテクノロジーの可能性
Digital Dividendsってなに?
青年海外協力隊に応募するコンピュータ系職種の隊員は
事前研修で行われる顧問講話の中でDigital Dividendsについてお話を受けると思います。
Digital Dividendsとは日本語訳にすると「デジタル化がもたらす恩恵」。
世界中、多くの人がスマートフォンを持ち、いつでもインターネットにアクセスできる時代。
世界発展の中でICT技術の進歩は大きな役割を担うと期待されていますが、
デジタル化がもたらす恩恵は期待されてほどの結果が出ていません。
World Development Report 2016上ではじゃあ「それはなぜなのか?」「どのように対応が必要なのか?」
といったことについて語られています。
僕が受講したのはMOOC(無償オンライン教育)で最大手のedX。
MITやハーバード大学などの大学が共同で運営しています。
World Development Report2016は全編英語で総数300ページ近いもの。
6週間の講座で2つもレポート提出もついて、頭が剥げそうになっていましたが、
無事に修了することができました。
Digital Dividends - Strengthening the Analog Foundation of the Digital Revolutionの概要
このレポートでなにが語られているかというと以下の通り。
What is the Report about?
It explores the impact of the internet, mobile phones, and related technologies on economic development. Part 1 shows that potential gains from digital technologies are high, but often remain unrealized. Part 2 proposes policies to expand connectivity, accelerate complementary reforms in sectors beyond information and communication technology (ICT), and address global coordination problems.
んー、どういう内容なのかあんまり分かりにくいですが、、、
Digital Dividends - Strengthening the Analog Foundation of the Digital Revolution
というタイトルの通り、
「デジタル化がもたらす恩恵を高めるためにAnalog Fundation(政策や人々のスキル、制度)を高め、整える必要がある」
ということについて、多くの事例をもとに語られています。
Digital Dividends - 情報格差とデジタル化がもたらす発展の現状
日本国内で販売されているスマートフォンの総数は2016年時点で約1億3030万台。
どこからでもインターネットにアクセスでき、富士山頂上から登頂のツイートなんかもできる時代です。
フィンランドでは、インターネットへのアクセスは基本的人権のひとつと認められるほど、情報化社会が進んでいます。
対して途上国では、約10人に8人が携帯電話を持ち、経済収入下位20%に占める人たちでも約70%が携帯電話を持っています。
インターネットへのアクセスは開発途上国に住む人口の31%に留まりますが、
収入格差と比較すると情報(デジタル)の格差は均等に分配されているようです。
国家の面から見ると
2014年の時点で国連加盟193ヵ国のすべての国がホームページを作成しており、
101ヵ国で個人用アカウントの作成、
73ヵ国がインターネット上で確定申告、
60ヵ国が起業登録ができます。
エストニアなんかは数分で起業登録ができるIT国家、
ウガンダはアフリカの中心国となるため、ITを含め産業などを国家として促進する国として有名です。
じゃあ、デジタル化の恩恵はどの程度、出ているのかといういうと以下のグラフの通り。
a. Global productivity : 1732年から5年毎の生産性成長率を表したグラフ
b. Global inequality : 1988年と2008年の収入比を比較したグラフ
左にいくほど貧困、右端100はBill Gatesなどのミリオネア。
80が先進国の中級階流に当てはまるけど、まったく恩恵を受けていないということになります。
c. Global governmance : 選挙に関わる何か。
(あんまり理解できてませんが、デジタル化の恩恵を受けれていないことを表しているみたいです。)
と、まあc. Global governmanceはおいておいても
経済面で見ると世界的にはデジタル化があまり効果を発揮していないことが分かります。
デジタルテクノロジーの可能性
デジタルテクノロジーでもっとも大きい恩恵のひとつが、Transaction Cost (取引・処理コスト)の削減。
携帯電話が普及する以前、2000代前半より前の時代は、
固定電話で通話して、不在であれば留守番電話、FAXの送信が普通でした。
今はスマホでSMS、メール、チャット。電話もLINEやSkypeの無料通話で世界中の人とコミュニケーションをとることができます。
シンプルに誰とでも繋がることができ、インターネットが普及することで、これまでお金と労力をかけて手に入れていた情報を無料で受け取ることができるようになりました。
途上国で携帯電話が普及した結果、それまで買い叩かれていた農作物が、農民が適正価格を知ることができるようになり、収入拡大に繋がっているということは有名なお話です。
さらにTransaction Costの究極を言えば、取引の自動化によって、取引にかかるコストは限りなく0に近づきます。
(AmazonやiTunes、航空会社などオンライン決済は設備費用はかかりますが、対取引数に当てはめると限界費用は限りなく0に近くなります。)
その他にも産業のオートメーション化によって生産性が向上したり、
インターネットを介した新規事業への参入、新たな雇用も生まれていますが、
これは人材と制度の整っている先進国のお話。
Apple社CEOのTim Cookが2017年MIT卒業式で述べた有名な言葉で
Commencement Address of 2017 MIT, Tim Cook
Technology is capable to do great thing. But it doesn't want to do great things. It doesn't want to do anything. That part takes all of us.
という言葉があります。
デジタルテクノロジー自体は、他のドローンやダイナマイトと同じであくまでツールの一つという訳です。
教育や法整備の整っていない途上国では、ともすればデジタルテクノロジー自体が
情報統制、不平等、独占企業を生み出す可能性があります。
実際に途上国ではオートメーション化の影響で労働の二極化が進んでいます。
上のグラフは薄緑から深緑に移るほど、高い技術が要求される仕事を表しています。
中間の緑は自動化できる食品業界などのライン作業といったところでしょうか。
自動化によって、人的労働緑から工業化されていることが示されています。
このようなデジタル化が進む現代の中で、デジタル化の恩恵を人々に行き渡らせるために
Analog Fundation(政策や人々のスキル、制度)を高め、整えようというのが本レポートのお題になっています。
本当はレポート全体をまとめようと思ってましたが、
予想以上に大変だったので今回は概要ということでここまで。
具体的な内容はまたどこかでまとめようと思います。
世界銀行が発表したWorld Development Report 2016 - Digital Dividendsは
以下のサイトからダウンロードできます。